painted blood
2008.05.06

コミティアで描いたまんがです。
kannaさんがこのまんがを元に小説を書いてくれました!
わたしが描こうとして削ったことを素晴らしく美しく書き上げてくれました。もう感動の嵐です。
ちなみに、以下のメモが元のあらすじです。kannaさんのと読み比べるのも一興です。
edda-kan版「painted blood」→直通








painted blood


怪我をして陸上を続けられなくなった。
よっぽど暗い顔をしていたらしい。
幼馴染のユウキがあれこれと話し掛けてくる。
この本面白いぜ。
たまにはカラオケでも行こう。
絵を描かないか。
やってみたいって言ってたあのゲーム、
持ってないなら貸してやるよ。
「絵?」
その言葉だけが頭の中に引っかかった。
「ああ、美術部」
ユウキはかけ持ちでいくつも部活をやっている。
「今ほとんど誰もいないけど」
誰もいないのか。
誰もいないのなら。

けれど授業以外で絵の具やパレットに触れたことがなく、
特に描きたいものもない僕に、いきなり何かが描けるわけもなく、
何日かは、ただぼんやりと放課後の美術室で一人
白いキャンバスと向かい合っていた。
ユウキが美術室の戸棚から出してくれたのは、
新品の48色の水彩絵の具だった。
12色のセットしか持っていなかった僕は、
それを使うのがなんだかもったいない気もして、
なかなか最初のチューブを開けられなかった。
外を見ると光に満ちていた。
ふいに泣きたくなった。
走って走って走って、だんだん何も考えられなくなって、
ゴールした後、目に飛び込んでくる世界の、痛いほどの眩しさや美しさを、
もう二度と感じることはできない。
目を閉じても、瞼の残像が胸を苦しくさせる。
あの鮮やかな色を、どこかへ吐き出したら、捨て去れたら、
少しは楽になるのだろうか。
48色の中からひとつの色を選んで、パレットに勢いよくしぼりだした。
そしてひたすらキャンバスにぬりたくる。

「あ」
絵の具がべたりとシャツの袖口についた。
教室の隅の水道で洗う。
「どうしたのそれ」
唐突に声をかけられた。
ふりむくと同じクラスのハギだった。
「すごい血だよイオリ君、保健室に行ったほうが」
真剣に心配そうな顔をしている。
「…絵の具をこぼしただけだから」
「なんだ、よかった」
ハギがにこりと笑った。
一瞬、思考回路と体のどこかの機能が止まる気がした。
何となくあとずさって距離を取る。
「綺麗に落ちるといいね」
彼女は戸棚の端から刷毛と大きな瓶に入った絵の具を取り出す。
それは林檎の色をしていた。

その後しばらくして、ユウキと美術室で顔を合わせた。
初日以来初めてだった。
僕の描きかけの絵を見ている。
「なんかダイナミックだな、目が離せなくなる」
「…血のイメージなんだ」
「え? 何のイメージだって?」
「ハギの、頭から離れなくて」
あの日から、視線が彼女を追ってしまう。
ああ、とユウキが笑った。
「好きなやつができるようならもう大丈夫だな」
がんばれよ、楽しみにしてるぜ と、含みのある口調で言われた。

好き、なのだろうか。
絵筆をおいて少し考える。よく分からない。
気になるのは確かだ。
友達と笑いあうのを見た。
丁寧なしぐさでプリントを配るのを見た。
それだけでは足りない。
ハギが転んですりむいたところを見てみたい。
カッターで指先を切ったところを見てみたい。
ほんの少しでいい、怪我をして、血を流してみせてくれないだろうか。
気になって仕方がないのだ。
彼女が、ハギがどうして間違えたのか。
傷口から流れ出る血の色と、僕の心と袖を染めていたこの鮮やかな空の色とを。
キャンバスが青く染まっていく。






戻る